- この曲はFeel like Makin loveの作者ユージン・マクダニエルスの曲である。この曲は、信仰と欲望をストーリー仕立てに徐々に盛り上がっていく曲。ロバータはイントロの演奏のところでストーリーを語る。「この曲はね、たくましい黒人牧師が悪魔の娘に誘惑され、神にテストされる。そんなお話よ。」と。歌は淡々と冷静に。ロバータはすごくサラリと歌っているのだが実際に歌ってみるとこの曲の難しさが分かる。アレンジや演奏が抜群にかっこいいのは、この曲のアレンジはダニー・ハサウェイだからだ。(これも知らずに選曲した)鈴木は、セリフはカットしたが、歌詞解釈を頑張った。そうでないと歌えない曲。ジワジワと体と声に覚えこませた。出だしは低い声からはじまり、盛り上がりは、張った声を出す。エンディング近くなって♪Reverend Lee♪ Reverend Lee♪と繰り返すところは、悪魔の娘が僧侶リーを追いかけるシーンでクライマックス。あの裏声のところがそのシーンで上手くいったので自分でもちょっと怖い!(分かる人には分かるよね!)コーラスの鈴木ひとりゴスペル隊(悪魔の子分たち)も良い味が出た。
ダニーと並んで敬愛するスティービー・ワンダーの曲は、1973年INNERVISIONSから④Higher Groundと⑥Golden Ladyを選曲した。鈴木ヴァージョンのHigher Groundはバンドが大変盛り上がり、まるでライブ録音!もったいないからギリギリまで使った。スティービーのアルバムがリリースされた1973年頃はまだベトナム戦争の中にあり、色々な意味での価値観が崩れ、怒りの歌詞も多くみられる。この曲もそのひとつ。それでも世界は周り続ける。高みを目指して。もう誰も僕を止められない!って。そんな内容でついつい私も力が入ってしまった。
そしてもう1曲のGolden Ladyだが、意味深なゴールデン・レディって一体誰?♪ゴールデン・レディ・ゴールデンレディ、僕はそこに行ってみたいんだ。導いておくれ。と、繰り返しながら最後はどんどん転調していく。一見ラブソングだが実は宗教的な歌かもしれないと思った。ゴールデンなレディは、人間ではなく神様かお釈迦様か、それとも荘厳な場所にいらっしゃる何者か?そこに連れていっておくれ。みたいな、そんなイメージを持ちつつこの曲を歌ってみた。
そして、スティービーのもう1曲は、5オクターブの声を持つと言われるミニー・リパートンのために書いた⑨Perfect Angel。ミニーの声、歌い方、洗練されていて、ミニーとすぐ分かる声。なぜ?と思う人もいるでしょうが、彼女は9才から歌のレッスン、後にオペラレッスンを受けクラシック音楽を勉強していたんだそう。徐々にR&Bに転向し、チェスレコードのバックコーラスやソロでも別名でデビューもしていた。31才の若さでこの世を去ったミニーだが芸歴は長い。スティービー・ワンダーはミニーの歌のファンだったという。1971年ミニーはスティービーのコーラスに抜擢。1974年にスティービーのプロデュースでアルバムPERFECT ANGELをリリースし、その中のLovin’ youが大ヒット。Lovein’ youは間違いなく良い曲だが、鈴木はPerfect Angelをカヴァー。挑戦しがいのある曲だった。
70年代のソウルミュージックの代表的な曲で、忘れてはいけないのがビリーポールの⑤Me and Mrs. Jonesという曲だ。これは1972年のアルバム360 Degrees Of Billy Paulからの大ヒット曲で、とてもせつない、道ならぬ恋のお話の歌。年上の女性、既婚のジョーンズに思いを寄せる優柔不断な年下男の気持ちになって鈴木は歌った。2004年リリースの鈴木のLove Love Loveというアルバムでもビル・ウィザースのI want to spend the nightを歌った。私はビル・ウィザースの曲が好きなのだ。今作でも何かやりたいな。と、考えている時1980年の⑪Just the Two of Usが頭に浮かんだ。歌詞はビルだったが、曲はロバータとダニーのデュエットで大ヒットしたWhere is the Love?を作曲したウィリアムサルター とラルフマクドナルドのコンビによるものだった。そうこのコンビがサックスのグローバー・ワシントン・ジュニアのために曲を作り、後にビル・ウィザースが詞をつけ大ヒット。何となくバブリーな匂いがするのは、70年代ではなくて、80年だから?さて、この⑬How Can You Mend a Broken Heartは、全ての録音が終わり、間をあけて通して聴きなおした後に急遽追加した曲。スローな曲が足りなかったから。アル・グリーンのアルバムLET’S STAY TOGETHERにHow Can You Mend a Broken Heartは入っている。ビージーズの曲をアル・グリーンがカヴァーしたのだ。日本でも26年以上前に放送していた海外ドラマAlly McBeal(邦題アリーMy love)でアル・グリーン本人がこの曲と共に登場しせつなく歌うシーンが幾度とあった。
続いて、これはソウルミュージックではないが、1977年のマイケル・フランクスの名盤SLEEPING GYPSY より⑩The Lady wants to knowを選曲した。鈴木ヴァージョンは、元々ローズトリオで録音していた。それだけでも素敵だったのだが、これにとろけるようなギターを入れてもらった。やっぱりこれだよね!このイントロでなくては。実際に歌ってみるととても難しい曲と分かる。最後にご紹介する曲は⑫Sunny。ナッシュビルの音楽一家に生まれたボビー・へブの1966年の名曲である。この曲のアレンジのイメージを説明するのに、Sly & The Family Stone の If You Want Me To Stayみたいな感じ、聴いておいてね!と、バンドメンバーにリクエストを出し、バッチリ上手くいった。そして今作GOLDEN LADYの13曲の中でエンジニア上田が最初にとりかかったのがこの曲Sunny。(ローズをファンキーにしてやろう!と思ったんだそう)一番時間をかけたのもこの曲。録音の時、ミックスの時にどんなに大変だったかを私に長々と説明してくれたけれどワスレタ。
(解説・鈴木 輪 )